有機化合物の酸性度は、その反応性を決定する上でしばしば重要な因子となる。反応の選択性を予測するには、有機分子間での酸性度の相対的な大きさを知っておくことが必要となる。
静電ポテンシャル分布/局所イオン化ポテンシャル分布の最大値を計算することで、カルボン酸の相対的酸性度を予測できる。すなわち、それら分布の最大値が大きいほど、その水素はより酸性であると考えられる。
ここでは、酢酸を基準として、いくつかの一般的な置換カルボン酸を元に計算結果とpKa実測値を比較しながらカルボン酸α位の置換基効果がどの程度かを見ておく。
(※エネルギー値は計算結果をそのまま記載しているが、同一分子でも小数点2,3桁以下は計算毎にズレを生じるため気にする必要はない。)
共役塩基(カルボキシレートイオン)が安定なほどカルボン酸はプロトン(H+)を放出し易いことになり、その酸性度は強くなる。言い換えれば、α位に電子供与性基があるとカルボキシル基の隣が電子豊富となるため、酸性度は弱まる。逆に、電子吸引性基があるとカルボキシル基の隣が電子不足となるため、酸性度は強まる。
以下のように、誘起効果のみで考えることができる置換カルボン酸は、他に目立った相互作用がないためか、静電ポテンシャル分布/局所イオン化ポテンシャル分布いずれとも実測値とのきれいな相関が見られる。
Surface energies (kcal/mol) and experimental pKa’s | |||
B3LYP 6-31+G* | |||
Maximum value of the electrostatic potential | Maximum value of the local ionization potential | pKa in aqueous phase | |
Trichloroacetic Acid | 339.650226 | 72.9004749 | 0.75 |
Dichloroacetic Acid | 322.920962 | 71.9664631 | 1.48 |
Monochloroacetic Acid | 306.723731 | 69.5754156 | 2.85 |
Formic Acid | 269.902284 | 68.9818374 | 3.75 |
Acetic Acid | 249.112475 | 67.5006132 | 4.75 |
Pivalic Acid | 240.240452 | 66.5905026 | 5.03 |
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