推薦図書リスト3(2010年)

by Author NameSept 8th, 2016

「寺子屋」免疫生物学 推薦図書

教科書の外にも学びたいことは沢山あります。「寺子屋・免疫生物学」では読んでみたい本の推薦もしています。いずれも手に入りやすい本で、多くが生体防御学研究室や図書館に収められています。

* 科学に親しむ読み物
宇宙は何でできているのか(村山 斉:幻冬舎新書)¥840
とても面白い。宇宙の始まりや素粒子などに関するホントはとても難しいことが、数式を用いずにかみ砕いて説明されているので、わかったような気がしてくる。媒介粒子の交換による力の説明も「あぁそういうことなのか」と納得できた。宇宙の誕生の謎に迫るためには、素粒子についての深い理解が必要なのだという著者は東京大学・数物連携宇宙機構(IPUM)の機構長。

科学者をめざす君たちへー研究者の責任ある行動とはー(第三版)(米国科学アカデミー:池内了訳:化学同人)¥1,470
科学者とはどんな存在なのだろうか。研究活動で守られるべき倫理的規範とはどのようなものなのだろうか。本書は米国科学アカデミーが作成したパンフレットの翻訳であるが、多くの内容は万国に共通な基本的心構えを示すものといえる。実験データの正しい取扱いや残念な不正行為などもケーススタディとして議論されており、学ぶ点は多い。

*人類の歴史・日本の歴史
銃・病原体・鉄—1万3000年にわたる人類史の謎(ジャレド・ダイアモンド:草思社)上・下:各¥1,995
なぜ人類は5つの大陸で異なる発展を遂げたのか。そしてなぜスペイン部隊はインカ帝国を征服できたのに、反対にインカ帝国がスペインを征服することはなかったのか。人類の1万3000年の歴史を見渡して、その原因を「人種による優劣」に求める通説を退け、「地理的要因」によるものだと看破する。文明の衝突とその結末に病原体や免疫が深く関わるとする指摘も、目から鱗がおちる気持ちがする。「科学」の眼を通した人類史。

それでも日本人は「戦争」を選んだ (加藤陽子:朝日出版社)¥1,785
スリリングな日本近現代史の最前線が、わかりやすい講義形式にまとめられている。ルソーによる「戦争がもたらす根源的な作用」とは何か(戦争相手国の憲法を変えること)に始まり、日本が近代で経験した戦争の歴史を解き明かす。私は大化の改新ほどに、日本の近代を知らない。なぜそのようなことになっているのかと思う。

*文学・エッセイにも親しもう
吉里吉里人(井上ひさし:新潮文庫)上・中:各¥700 下:¥740
日本政府に嫌気がさした東北地方の小さな村が、「吉里吉里国」として独立宣言をする。これを阻止するためにあの手この手を講ずる政府とのやりとりを活写する長編物語。発表の1981年当時は何と奇想天外な事かと思われたが、根深い沖縄問題や「大阪都」などの議論がある現在、絵空事ではないかもしれない。著者・井上ひさしは2010年没。

* 哲学・思想や日本についての考え
これからの「正義」の話しをしよう-いまを生き延びるための哲学—(マイケル・サンデル:早川書房)¥2,415
NHKでも放送されたハーバード大学の人気講義「Justice(正義)」の書籍版。1人殺せば5人助かる場合、その1人を殺すべきなのか。大金持ちに高い税金を課し、貧しい人に再分配することは公正なのか。社会で生きる上で直面する正解のない問題に対して、「正義」を考えるためのヒントを与えている。米国の「エリート教育」の有り様も垣間見られる。